誰にでも得手不得手の分野はある
同じ英語の勉強するにしても、文法や読解は苦手だけども聞くことと話すことは好きだという生徒が時々います。もうずいぶん前になりますが、中学1年で入塾してきた生徒がまさしくそんな生徒でした。彼は単語を覚えるのが苦手で、何度書き取りの練習をさせても簡単な単語さえ書けませんでした。この生徒が3年生になったとき、こんな質問をしてきました。「先生のように英語をペラペラしゃしゃべれるようになるにはどんな勉強をしたらなりますか」と、私はこれを聞いて内心占めたと思いました。これによって彼の指導方法も変えられるかもしれないと思ったからです。書くことが苦手であった彼は、英語を話すことには非常に興味を持っていました。そこで、それからは聞くことと話すことを重点に置いた指導に切り替えました。すると、見る見るうちに彼の英語に対する姿勢が変わってきました。それまでの彼とはまるで違って、やればできるのだという自信を持ち、英語の勉強にも積極的に取り組むようになりました。これが中学3年生の時です。わずか2年間で一人の生徒がこんなも変わるものかと正直驚いたものでした。この生徒はのちに東京六大学の一つに合格して、大学院まで進んでいます。現在は有名私立高校で英語の教師をしています。
英語ができない生徒がもう一人いました。彼は母親に連れられて私の教室に入ってきました。ちょうど中学2年生に上がる春先のことでした。学校の成績や学力試験の結果を見せてもらうと、いずれも通信簿で言えば2、学力テストでも偏差値は45以下でした。それでも国語と社会科は偏差値で60以上ありました。この生徒は指導の仕方では確実に成績は上げられると確信したのです。それは彼の国語力でした。国語の偏差値は65ありましたので、彼の英語力をあげる自信が私にはありました。過去にも英語が苦手だが、他の科目は悪くない生徒の指導もやってきました。特に国語力がある生徒はどの生徒も英語好きにしてきた実績があったからです。ですから、この生徒は間違いなく伸ばせると思ったのです。思った通り、高校でも大学でも英語の成績はよくなっていました。この生徒は社会人になってからも通い続け、なんと16年間も私から指導を受けています。私の教室に通いながら、英検1級それも一度ならず複数回受験して一度の失敗を除けば私が知る限り少なくとも3回は1級に合格しています。国連英検A級合格では優秀賞まで取っています。その後も通訳検定、工業英語検定など英語の資格にチャレンジしています。
生徒の成績を伸ばすために教師がすべきこと
生徒の成績を伸ばすには、教師が上手くレールに乗せてあげることだと思います。それは思うほど簡単ではありませんが、いったん生徒が軌道に乗ってくれるとあとは生徒が自主的に目標を決めて進んでいきます。教師が必要な時だけ手を貸します。ここまで行ける生徒はレベルの高い生徒だけだと考えがちですが、そうではありません。ここで紹介した生徒ももとは英語につまずいていた生徒でした。
生徒の指導で大切なことは十分な思いやりを持ち、生徒の性格、趣味・関心事、兄弟構成などを考慮してその生徒がやる気を起こす指導方法を工夫して、教師も教えることに情熱を傾けて互いに努力することです。