中学校・高校の英語科の指導要領

来年から高校受験・大学受験英語がどのように変わるかということを説明する前に文科省が3年ごとに改定している中学校・高等学校の学習要領について説明しておきます。中学校の指導目標について以下の4点を挙げています。

中学校・高校の英語科の指導要領 4点

  1.   初歩的な英語を聞いて話し手の意向などを理解できるようにする。
  2.  初歩的な英語を用いて自分の考えを話すことができるようにする。
  3.  初歩的な英語を読んで書き手の意向を理解できるようにする。
  4.  初歩的な英語を用いて自分の考えなどを書くことができるようにする。

いずれも初歩的な英語となっていますが、では初歩的な英語とはどの程度の英語科ということについては触れていません。非常に抽象的な表現になっています。そこで、初歩的な英語について私なりに推論してみました。小学校英語で習得する英単語がおよそ600語、中学校で習得することになっている語がおよそ1,900語、小学校と中学校で習う英単語数は約2,500語になります。ここから初歩的な英語というのは、この2,500語程度で書かれた英文を読んで理解することになります。以前は中学校で取得する語彙数は900語から1,100語でしたから、語彙数だけでみるとかなり増えていることになります。このレベルは英検3級(中学卒業レベル)で求められている語彙数よりは少し多いように思います。これは海外の出版社から出されている “Ladder Series” のレベル2に相当します。話す英語については、家族のこと、学校のこと、部活動のことなど生徒の身の回りのことについて話ができることとなっています。リスニングについても初歩的な日常会話が聞き取れることとなっています。書くことについては、英文を読むのに必要な語彙数ほどは当然求められないと思いますが、初歩的な語彙を用いて自分の意見を書けることとなっています。

高等学校の重点指導目標

 次に高等学校の指導要領でも以下の4点を重点指導目標にしています。

  1. 聞く領域:自然な速度の物語や記述文を聞き取ることができ、物語の因果関係を理解できる。
  2. 話す領域:平易な話題について情報を提供でき、自分の意見を簡潔に述べ、デイスカッションに参加できる。
  3. 読む領域:目的に応じて、基本的なリーデイング・ストラテジーを使用して情報を得ることができる。
  4. 書く領域:独力で短い文や手紙を書くことができ、教師の指導で修正できる。

文科省の指導要領で分かることは、(4)の書く領域を除けば、非常に高尚な目標を掲げていることが分かります。一見大学生に求めている指導目標かと疑いたくなります。

 一人の生徒が中学校入学から高校卒業までの6年間に受ける英語の授業時数は学校やコースによって若干の違いはあるものの、おむね750時間くらいです。小学校での英語の授業時間を加えてもせいぜい850時間程度にしかなりません。

これでは新聞や興味のある本を読み、テレビやラジオの英語ニュースを理解し、自由会話で自分の意見を言えるレベルではありません。

高校入試英語科の変更点

高校入試英語科の変更点は、次の通りです。

最大の特徴は、読む、書く、聞く、話すの4つの領域の英語を使って何ができるかを教科の目標としている点でしょう。

教室では英語の授業は基本的には英語で行うということがさらに強調されるようになりました。というのは、英語の授業は英語で行うことを基本とするという考えはここで初めて出てきた指針ではないのです。前回の中学校の指導要領でも謳われています。英語の授業はコミュニケーション重視に移行させていきたいという文科省の狙いがあるようですが、中学校の教育現場では英語の授業は英語で行うには無理があるようです。英語で授業を行うことができる先生がどのくらいおられるかということです。以前文科省が行った調査で分かったことですが、TOEICのスコアが730以上または英検準1級以上を持っておられる先生はわずか38%であったという報告があります。これでは英語の授業を英語で行えるレベルではありません。いまだに文法・訳読中心の授業から脱却できていないのが実情です。これは中学校に限ったことではありません。高校でも同じことが言えます。その根底には私が考えるには次のような理由があります。

  1. 日本語での授業が慣例化しているために教師も慣れない英語での授業には抵抗がある。
  2. 英語だけで行う授業に対する効果がまだ客観的に実証されているとは言い切れない。
  3. 英語で授業を行った場合、多くの生徒が授業の内容を理解できない。4)先に述べていますように英語教師のコミュニケーション能力に不十分なところがある、など理由で現実問題として、コミュニケーションを重視した授業は無理であることが分かります。

大学入試英語の変更点

次に大学入試英語の変更点や特徴について説明します。2021年度の大学入試からセンター試験は「大学入学共通テスト」という名称に代わります。共通テストの主な特徴は次の通りです。

1. センター試験で出されていた「発音・アクセント」問題や英文中の語句整序問題は出題されなくなります。読解問題が中心になります。

2. 以前のセンター試験では、「筆記試験」が200点、「リスニング問題」が50点でしたが、共通テストでは「リーデイング」100点、「リスニング」100点と同配点になります。「リスニング」が弱い生徒にとってはセンター試験よりも厳しい試験になることも考えられますが、反対に「リスニング」に強い生徒の取っては朗報です。

3. センター試験では「リスニング」問題では、それぞれ2回読まれていましたが、共通テストでは1回読みと2回読みの問題が混在しています。「リスニング」の内容も平易な日常会話から資料やグラフを見て答える問題など多岐にわたっているようです。

以上高校・大学入試の英語の動向についての説明でした。

次はEIアカデミーでは、変わりゆく高校・大学の入試英語にどう対応して、生徒の希望校に合格させているかについて説明していきます。

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